心の中に奏でる、永遠の向日葵
すれ違い
すれ違い
『うるさい!』
向日葵のあの怒号を聞いてから、早一週間がたってしまい、今日は六月の最終日。
あんなに恐ろしく、身が震えたった声を聞いたのだ。ぽけっとして、普通に音楽室に行けるわけがない。
この一週間、向日葵とはまるで話さなくなった。
まだ会って三カ月しかたっていないのに、向日葵と話すことなんて、もう俺の中では、日常になっていた。
朝起きて、顔を洗い歯磨きをするように、向日葵と会って話すというのは、俺の中で、あまりにも当たり前になり過ぎていたのだ。
『大切なものは失ってはじめて気づくわけだし』
向日葵が、ずっと前に、そんなことを言っていた。
そうか。こういう事だったんだ。
向日葵の大切さを、教えられた。向日葵と話さないだけで、こんなにも俺の心が沈むなんて、いまだに信じられない。
でも、そういう事だったんだ。俺にとって向日葵は、大切なものだった。そして、失った今、それに気づいたんだ。
昼ご飯の時間にはいる。三人と食べる気分にはなれず、俺はフラフラと音楽室に行った。
もしかしたら、向日葵がいるかも。そんな無謀な期待もむなしく、もちろん音楽室には誰もいなかった。
俺は、ピアノの鍵盤の蓋を開けると、ドの音を押してみた。
何も起こらない。当たり前だ。当たり前の事なのに、なんでこんなに悲しい気持ちになるんだろう。