心の中に奏でる、永遠の向日葵
微かに聞こえた、黒西の言葉。
分からない。本当に小さな声だったし、それこそ空耳とも思えたが、そこを考える暇もなく、黒西は真っすぐ俺を見つめた。
「女の子の気持ちは、案外意外なものだったりするのよ。あんたが謝れば、意外と許してくれるかもね」
なんとなく、藪から棒に聞こえる黒西の口調。
「じゃあ、謝ったら意外と許してくれるのか?」
「さあ?知らないわよ。私、向日葵さんじゃないんだもん」
今までの親身な受け答えが一変。突然、冷たい声になった黒西に、俺はむっとした。
「なんだよ、その言い方。なんか怒ってんの?」
すると、黒西は踵を返して、音楽室の出口の方まで突然走り出した。
「お、おい!」
「あんたに一つ教えておくけど!」
黒西は、そこで足を止めると、俺を振り返って、バシッと指をさした。
「世の中にはね、感情を押し殺して生きてる人だっているんだよ!だから、ちゃんとやることはやるんだよ!」
そう叫んだかと思ったら、俺に言い返す隙も与えずに、走って出て行ってしまった。