心の中に奏でる、永遠の向日葵
「あ、向日葵。これ…」
俺は急いでCDプレイヤーを向日葵に渡そうとするが、そのころには向日葵は車に乗り込んでおり、向日葵のお母さんも、俺には気づかない様子で、車を発車させていた。
「あ、ちょっと待って!」
俺が慌てて、走り出す車を追いかけるが、車は速度をつけて、俺から離れていく一方。
どんなに足を速く前に出しても、どんなに足に力を入れても、車はどんどん離れて行ってしまう。
その途端、俺は恐怖を覚えた。
暗闇の中で、向日葵が、どんどん俺から離れていく。俺が追いかけても、なぜか追いつけない。
『待って…。待ってくれ!行かないでくれ!』
そう叫んでも、向日葵はどんどん漆黒の暗闇の中へと溶けていく。
車はとうとう曲がり角を曲がると、黒い煙をたなびかせ、去って行ってしまった。
一人、黄昏の空の下、俺は突っ立っている。
どんなに手を伸ばしても、どんなに追いかけても、届かないものはある。
美しく紅に染まった空は、残酷なまでに、俺にそう伝えているような気がしてならなかった。