心の中に奏でる、永遠の向日葵
だいぶ暗くなってきて、音楽室に続く廊下は、不気味な雰囲気を醸し出しているが、そんなこと、向日葵には関係ない。
「コンサート緊張したねー」とか、「意外とあっという間だったねー」とか、そんなことを言いながら、音楽室に入った。
幸い、窓の外からは、あの野外ステージが見えるし、花火もきっとここから見えるだろう。
「ごめんね。日向君、私の気持ちを汲んでくれて、音楽室に来たんでしょ?」
「…え?あ、なんだ。バレてたのか」
向日葵は、黙って頷いた。
窓の外に映るのは、夕焼け空なんかじゃない。
茜色の空は、西の隅で濃く染まり、上にはどこまでも広がる、深く濃厚な闇と、青白く光る、満天の星で輝いていた。
「コンサート、すごい楽しかったよ。今まで出た中で、一番楽しかった」
俺は、窓の外を見つめながら、向日葵に伝えた。
本当の事だ。こんなに言葉では言い表せれないほどの心地よさを感じたのも、ましてや演奏中に微笑んだのも、初めてだったんだ。
「よかった。私も、拍手を聞いて、すごい気持ちよかった」
向日葵も、棚に座りながら、静かに言った。
外では、ワイワイと騒ぐみんなの声が、ここまで聞こえてくる。
言わなきゃ。今言わなきゃ、きっと後悔する。
「向日葵」
俺は、向日葵の名前を呼んだ。
舞台に立つ直前の、あの時みたいに緊張している。