心の中に奏でる、永遠の向日葵
「俺は…。俺は、向日葵のおかげで、感情を持てた。親と向き合えた。誰かを想う気持ちを、持つことが出来た。どんなに返しても、返しきれないほどの恩を、俺は今感じている。向日葵のおかげで、俺は今、ここにいるんだ」
一気に言うように、でも一つ一つの言葉を、ゆっくりと言うように、俺は向日葵に、一番伝えたかったことを伝えた。
この学校に来た直後は、俺は本当にダメな人間だった。
でも、向日葵と出会って、俺はいろんな悩みに向き合えて、解決できるまでに、成長できた。
人を思いやり、人のために尽くす。
どんなに突き放されても、絶対にあきらめない心を、俺は持つことが出来た。
そして、今までだったら絶対に逃げている、辛い事実も、ちゃんと受け止められるようになった。
全部、全部向日葵のおかげだ。
「ありがとう、ございます」
俺は、深々と頭を下げ、お礼を言った。
「そんな…。お礼を言うのは、私の方だよ…」
向日葵の声と一緒に、鼻をすする音が聞こえた。
見上げると、向日葵は瞳に涙を浮かべている。音楽室を照らす月光が、幻想的に向日葵の涙を照らしている。
「初めてだった。こんなに私を追いかけてきてくれて、こんなに私にぶつかってきてくれた人。何もかも諦めて、枯れかけた向日葵に、日向君が光を与えてくれたんだよ。だから、私は今、ここにいるんだ」
すると、とうとう向日葵の瞳から、すーっと一筋の涙が零れた。