心の中に奏でる、永遠の向日葵
風が吹いてきた。頬に誰かにやさしく触れられたような感覚を覚える。
向日葵の美しい焦げ茶色の髪の毛も、揺れていた。
途端に、向日葵は膝の上で、指を動かしだした。
イメージで、ピアノを弾いている?
その指の動きを見ただけで、俺は向日葵が何をイメージして弾いているのか分かった。
フレデリック・ショパン作曲、練習曲ハ短調作品10-12。『革命のエチュード』として知られる、ピアノ独奏のための作品だ。
なぜだろう。音は一切聞こえないのに、心の中が気持ちよくなってくる。
目を閉じてみた。何も浮かばない真っ黒な世界が広がるばかりだが、何か先にあるような気がしてならない。
頭ではなく、耳からじょじょに、ピアノの音色が入ってくる。
目を開けて、もう一度向日葵を見た。
少し遠いせいで向日葵の顔は見えないが、思いっきり体を左右に揺らしているその様子だけで、向日葵は楽しくイメージで弾いてるんだろうなと分かった。