心の中に奏でる、永遠の向日葵


「また、3時間目には、俺が担当する音楽の授業がある。学年が上がっての初めての授業だから、先生も楽しみに…」
 

へえ。三時間目には音楽の授業か。先生、バイオリンやってるって言ってたし。聴かせてくれるのかな…。
 

『ちょっと聴かせてよ』
 

突然脳裏に蘇ってきた、あの言葉。
 

四年たった今でも忘れられない記憶。
 

慌ててもみ消そうとするが、倒れてこぼれてしまったインクのように、頭の中をどす黒い何かが覆う。
 

俺がピアノの事を本気で嫌いになった次の日の、中学に上がったばかりの頃の、音楽の授業の時だった。
 

それまでも何回もリクエストされてたし、俺も喜んで弾いていた。
 

弾いてる時のみんなの視線、弾き終わったときの褒め言葉。それが俺にとっての、なによりの快感だった。
 

でも、そのときは足が動かなかった。声も出なかった。本当に、金縛りにあったみたいに、自分でも訳が分からなかった。
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