心の中に奏でる、永遠の向日葵
「え?よ、よかった?」
空耳かと思って聞き返す俺に、向日葵は力強く頷いた。
「うん。よかった」
向日葵は、棚の上から降りると、杖を使って、またピアノの場所に戻ってきてくれた。
そして俺の前まで来ると、顔を上げる。
目は合わなかった。向日葵の茶色い瞳は、もっと上を見上げていた。
でも、心の目は、合ってるんじゃないかって、瞬時に思ってしまう。
向日葵は、今度は優しく俺に向かって微笑んだ。
「今まで、日向君は感情をなくして弾くことに対して、どうとも思ってなかった。でも、今日は違う。今日弾いたときは、感情を無くして弾くことに対して、不安感を持った。ちゃんと日向君が、感情から逃げずに、真正面から向き合った証拠だよ」
…真正面から?
俺は、自分の指を、静かに丸めて、目を閉じた。
真っ黒になった先に見えた、観客達が俺から離れていく姿が見えた。