心の中に奏でる、永遠の向日葵
向日葵が、得意げに鼻を膨らませる。
そのまま横に置いてあるカバンを手に取ると、杖を前で叩きながら、出口に向かって歩き出す。
「もう帰るのか?」
「うん。うちのお母さん、すごい心配性だからさ。日が暮れても帰ってこなかったら、警察に電話しちゃうくらいなの」
俺は、ピアノに座ったまま、ぎゅっと手をもう片方の手で握りしめた。
向日葵の母さんは、そんなに向日葵の事を心配してくれてるのか…。
「…じゃあ、俺も帰るよ」
俺は、ピアノのそばに置いてあったカバンを肩に掛けた。
「よかったらさ、一緒に帰らない?」
「え?」
向日葵の思いもよらぬ提案。
一瞬、心地よい鼓動が聞こえた。
「嫌だったらいいよ。でも、分かれ道までとかさ」
「あ、ああ。もちろん、いいよ。行こう」
俺が向日葵と帰りたくない、と誤解されないように、慌ててそう答えると、向日葵の横に立った。