この瞳だけを見て
EP:001 ただのクラスメイト
【 2022年3月】
大学の教室で最後の対面講義が行われていて、ホワイトボードに黒いペンでカッカと音を立てながら書く音が聞こえてくる。
講義を聞きながらシャーペンの芯を出して、ホワイトボードに書かれた内容をスラスラとノートに写す。
教室の窓から春の暖かい風が吹いてきて、開いていた教科書のページがめくれてしまった。
開いていたページに戻そうと手をかけた時、角の僅かな白いスペースに自分の似顔が描かれていることに気が付いた。
「何これ⁉︎」
誰にも聞こえない小さな声で呟き、思わず笑みが溢れる。
講義が終わると、席を立ちゾロゾロと一斉に教室を出て行く。
教科書やノートをリュックにしまっていると、教室の後方の席にいた同級生が私の席にやってきて声をかけてきた。