この瞳だけを見て
授業の合間の休み時間に黒板消しをしている智哉の後ろ姿を眺めながら、肘をついてぼーっと見ていた関谷の前を茉侑が通りかかった。
「何ぼーっとしてるの?」
「あ?いや、何でもねーよ」
「小西くんと何かあったの?」
「何って…だから何もねーって」
「嘘…今嘘ついたでしょ?耳真っ赤だよ⁉︎」
関谷は両耳を手で触って誤魔化した。
「言ってみ⁉︎スッキリするかもよ?」
茉侑は関谷の前の席に座り、関谷が答えるのを待っている。
「智哉…好きな人がいるみたいなんだよね」
「えっそうなの?誰誰?私の知ってる人?」
「えっ知らないの?富沢なら気付いてるのかと思ってた」
そうボソッと呟きながら、関谷はノートの端に名前を書き始め、それを茉侑はじっと見つめていた。