この瞳だけを見て




ノートの向きを変え、茉侑にそっと見せた。



『原 祐奈』



その名前を見て茉侑は思わず、祐奈の方を見た。



「そっち見るな、バレるだろ?」


「これ、本当なの?」



手で口元を抑える茉侑は終始ビックリしていた。



「でも関谷くんはよく思ってないんだよね?」


「なんだろうな…複雑なんだよなー」


「ねぇそれってさ…『嫉妬』なんじゃない?」


「嫉妬⁉︎俺が?」


「仲良い人を取られるみたいな気持ち。自分の事、構ってくれなくなるんじゃないかっていう不安とかさ」



富沢はうまいところをついてくる。


俺の心を一瞬で読まれたような気持ちにもなった。



黒板消しを終え、関谷の元へ歩いてくるのに気付き、慌ててノートに書いた名前を消しゴムで消した。



「何話してたの?」



関谷はぎこちなく「別に〜‼︎」と答える。


『演技下手くそ…』と呆れながら茉侑は席を立った。





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