この瞳だけを見て




関谷くんと茉侑と別れて、家に帰る夜道。


祐奈は隣を歩く智哉の手をそっと繋いだ。



「祐奈から手を繋ぐなんて珍しいね。どうしたの?」


「ねぇ智哉」


「ん?」


「2人が付き合ってること知ってたの?」


「うん…賢人がこっちに帰ってきたタイミングで寿司食べに行った時に聞いた。富沢が『祐奈には直接伝えたいからまだ言わないで欲しい』って口止めされたんだ」


「そうだったんだ」


「隠し事って俺苦手だからさ、やっと言えた。多分富沢もそう思ってると思う」


「そうだね」


「俺さ、一度賢人が祐奈のこと好きなんじゃないかと疑ったことがあるんだ…」


「えっそうなの⁉︎」


「結局違ったんだけどね。こうやって一度繋いだ手を簡単に離したらいけないんだって思ったんだ」


『一緒にいてくれるだけでいいんだよ』


『初めてだよ…いるだけでいいなんて言われたのは』



祐奈は繋いでいる手を見て、顔を上げふふふと笑った。





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