この瞳だけを見て
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一方、反対側へ歩いて行った小西はというと、曲がってすぐの壁に背を付けて立っていた。
祐奈が教室へ帰る後ろ姿を壁越しから見て、ふぅ…と息を吐いて正面を向き直しながら呼吸を整えていた。
思わず溢れ出しそうになった気持ちを押し殺すかのように、左の拳で自分の胸を叩いて、その場から立ち去った。
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【 体育祭当日 】
次々と競技が行われ、ピストルが鳴り響く。
祐奈はクラス席に座って応援していると、隣に座っていた茉侑がキョロキョロしているので肩を叩く。
「茉侑どうしたの?誰か探してるの?」
「イケメンいないかな〜って。ただのイケメンじゃないよ?ダイヤの原石系、磨けば光るタイプの」
「そうだね。いたらいいね…見つけたら教えるね」
茉侑はそんなことしなくとも、男子から寄って来るのに。正しく引く手数多ってやつ。