この瞳だけを見て




ぼんやりと考え事をしていると、運動場のトラックを横切る小西くんが視界に入ってきた。


そして祐奈が座る席の目の前を通り過ぎて行く時にふと目が合う。


たまたま視線があっただけだと、一瞬目を逸らして再び彼を見ると、じっと目が合っているというか、見つめられているような感覚に陥った。


これは…偶然ではない⁇


茉侑が話していた内容を意識してしまっているのか、なんだろうこの違和感…


それにふと思い出すのが、小西くんは自動販売機前であの時、何を言おうとしていたのか。


分かっていないからこそ、未だに気になってしまい、胸の内がモヤモヤしていた。


なんだか自分の心が掻き乱される。



運動場に設置された電子時計を見て、祐奈は席を立った。



「私、そろそろ係の仕事行かなきゃ」



テントに向かい、指定された席に座ると、運営から順位と名前が書かれたプリントを渡された。






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