この瞳だけを見て
名前を間違えないようにしっかり確認して、筆を取り、墨汁を付けて本番の賞状に一画一画丁寧に執筆していく。
順調に書き進んでいると、隣のテントから「痛って〜‼︎」と大きな声を発しながら手当を受け、腕に大きめの絆創膏を貼ってもらう関谷くんの姿があった。
「ありがとうございます」
関谷は治療が終わり、テントから出ようとした途端、ふと隣のテントに祐奈がいる事に気づき、近づいて行く。
「あれ、原さんって書道部だったの?」
「うん、そうだよ」
祐奈の背後から賞状を覗き見る。
「字が綺麗だよな。いつから習ってるの?」
「小学校2年生から書道7段だよ‼︎」
「えっ有段者かよ、凄いな‼︎」
関心している関谷の方へ振り返ると、右腕に大きめの絆創膏が貼られているのに気付く。
祐奈は関谷の右手首を掴み、「怪我したの?」と言うと、「あぁ…まぁな」といつになく低い声でボソッと答えた。
すっと手を離されると、「ふぅ〜ん」と祐奈は返事をする。