この瞳だけを見て
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一方、係の仕事を終えた祐奈は席を立ちテントを後にした。
首を回し、左肩を右手で押さえながら自分の席へと向かう。
茉侑と同様に自分の席には女子達が集まっていて、座れなかった。
「借り物競走に誰か出てるのかな?」
何も気にも留めず、入場門へ向かう。
入場門前には係をしていた関谷と茉侑が立ち話をしているのが見えた。
祐奈は次の次の競技だったので、既に招集が始まっていたので列に入っていき、体操座りをして待機していた。
すると運動場を走っていた小西が入場門へやって来た。
入場門前にいた関谷と茉侑はじっと小西を見て、列に並ぶ女子達は目の前に小西が立っている事でザワザワした雰囲気になった。
小西は列の後方へ歩いていくと、祐奈のいる横列で足を止めた。
祐奈は地面を見て指で砂遊びをしていたので、小西が声を掛けられるまで全く気付かなかった。
何の迷いもなく「原さん、こっち来て‼︎」と声をかけられ、顔を上げると小西がいて思わず「えっ⁉︎」っと声が漏れる。