この瞳だけを見て
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彼と出会ったのはおよそ7年前。
【 2015年4月】
同じ春風が吹いて桜の木から花びらが散る高校1年生の春の頃だった。
後ろの席から肩を叩かれ目を開けると、そこは入学式の真っ最中だった。
いつの間にか、式の途中で寝被っていたのに気付いた。
後ろを振り返ると茉侑(当時 16歳)がいて、前の席に座っている私に近付き、小声で話しかける。
「祐奈、保護者席見てよ‼︎」
「ん⁇」
茉侑に言われて、通路を挟んだ向こう側の保護者席を見ると、私の母親と茉侑の母親が何やらザワザワしているのが見えた。
「一体何してるんだろう」
「さぁ…」
首を傾げた私は再び正面を向き、右手であくびを隠したのは原 祐奈(はらゆうな)16歳。至って普通で地味〜に生きてきた系女子。