この瞳だけを見て




図書館に入って、祐奈の隣の席に座った智哉は黙ったまま勉強を始めた。


この時高校3年の祐奈と智哉は隣のクラスだった。


唯一同じ時間を過ごせるのが図書館で待ち合わせをして勉強して、一緒に下校するまでの僅かな時間だけ。


志望校が偶然にも一緒だったこともあり、勉強するモチベーションも高かった。



下校中、手を繋ぎながら帰っていると、智哉が「ねぇ」と祐奈に声をかける。



「さっき図書館で関谷となんか話した?」


「関谷くんと?何話したっけ?あぁ…私がボーッとして勉強が捗ってない時に、教科書で頭叩かれた‼︎」


「えっ、大丈夫⁉︎」


「うん、全然大丈夫!寧ろ目が覚めたから良かった」


「それだけ?」


「うん、それだけ‼︎」



日中は廊下ですれ違う程度なので、2人が会えない時間を補うかのように、その日の何気ない出来事を話して、共有し合っていた。





< 76 / 136 >

この作品をシェア

pagetop