この瞳だけを見て
だがしかし、私の平凡過ぎる日常にある事件が起こる。
【 12:00 】授業が終わり、チャイムが鳴ると同時に「ありがとうございました」と挨拶をした途端、教室を勢いよく飛び出してはみんなこぞって売店へと向かう。
この日は私の大好きなパンが売られているので、他の生徒達と混ざって売店戦争に参加した。
いつもは売店に到着した時には、既に売れ切れている大人気のパンが奇跡的に一つだけ残っていた。
チャンスだと思い、すかさずそのパンを手に取った瞬間、手が触れてパッと隣を見ると小西くんだったのだ。
彼はチラッと胸に付けている【 原 】と刻まれた私の名札を見て、スッと顔を上げて視線を合わせてきた。
「あ、どうぞ」とちょっと笑顔且つ恥ずかしそうに彼はパンを譲ってきた。
「あっ…ありがとう」
彼と私が初めて会話をした瞬間だった。