溺愛は嬉しいですが、自立させていただけませんか?
「律。今日はいつにも増して不機嫌だな。」

律の友人、佐伯 悠斗(さえき ゆうと)は、律にそう問う。

「当たり前だろ。きたねぇー男どもが。勝手に愛紗のこと、天使なんて呼ぶんじゃねぇぞ。
愛紗は大天使、いや女神だろ!本当ウザい。
あと、杉下のヤツ、変なこと言うなよな。」

悠斗はそんな律の言葉に苦笑する。

「あながち、杉下さんの言っていることは間違いじゃないよね。というか、正解だよね。」

そんなことは無視して、律はペラペラと話し出す。

「なあ、聞いてくれよ、悠斗。
愛紗、寝癖ついてたんだぜ?めっちゃかわいいかよっ!今日の愛紗の天然も炸裂してたし。かわゆす!」

「そ、そうなんだ。よかったね。」

適当に返事する悠斗に何故かキレ出す律。

「よかったね、どころじゃねぇよ!
ほら、見てくれ!今日の愛紗コレクション。」

そう言って、ニヤニヤしながらスマホを取り出す律。待ち受けは、当然愛紗とのツーショット写真。
パスワード入力後の待ち受けも、愛紗のオフショット。
そして、アルバムアプリの中には、愛紗の写真しか保存されていない。
今日の分でも50枚の愛紗の写真。
まだ、朝の段階なのにも関わらず、50枚。
愛紗の寝起きの写真や、ボサボサの髪の愛紗の写真、愛紗の寝顔の写真までもが、保存されている。

「あー可愛い!どの愛紗も可愛すぎる。」

律の愛紗愛に若干引く悠斗だが、ごもっともなツッコミをする。

「え?じゃあなんでそんな毒舌かましちゃうの?」

「そ、それはだな。どう話していいか分からないっていうかだな…」

「不器用すぎでしょ、律。彼女、結構ハイスペックで人気あるんだよ?美人だし、家庭的だし、立ち居振る舞いが、なんか綺麗だし。」

悠斗は、自分が墓穴を掘ってしまったことに気がついた。

「まさか、悠斗、お前も愛紗を狙って…?」

「は?いやいやいやいや!ないないないない。
絶対関わりたくない!」

「そうか、それなら良かった。」

(あの殺気、マジで怖い。)

悠斗は心の中でそう思ってしまった。

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