君の笑顔に涙する
嫌いなもの、嫌いなもの……。
食べ物だと、なんだろう。特にないな。出されれば、なんでも食べるし。
凛はあとなんて書いてたっけ。
虫?
いや、別に嫌いって言うほどじゃないな。
勉強も、嫌いでもない。運動は……嫌いだな。書いとこう。時間は、あと半分くらいか?
このまま嫌いなものを考え続けても仕方ない。好きなものを考えよう。
食べ物だと……ないな。
好きって言うほど、好きな食べ物ない。
別に、凛と一緒なら何でも好きだ。
あとは、場所?
別に、凛がいればどこでも好きになれそうだ。
「あと、5秒ー」
そんな凛の言葉がきこえ、僕は、かなり恥ずかしかったが、『好き』の下に、三文字、殴り書いた。書き終わったと同時に、「はい終わりー」と、凛の明るい声が耳に届く。
凛は「見せて」と、ルーズリーフを取り、そして書かれている文字に目をまん丸にさせた。
「言ったろ、凛ほど豊富じゃないって。おもしろくないって」
「……有って、バカでしょ」
「うるさいな」
「これしか、思いつかなかったの?」
「……うん」
そう、小さな声で返す。
すると、凛は、ルーズリーフで顔を隠しながら笑っている。そんな凛を見て、自分が書いた三文字……『浅野凛』が、恥ずかしくてたまらなくなってきた。
笑いが収まったのか、凛はさっきまで僕が使っていたシャーペンを手にとり、自分の紙に何かを書く。そして、僕へと差し出した。
「書き忘れたことがあったから、追加した」
僕は差し出された紙を受け取り、追加された文字を見て、目をまん丸にさせる。
「相思相愛、ってやつ?」
そう、少し頬を赤くさせた凛が、僕は愛しくてたまらなかった。