君の笑顔に涙する

 翌日、終業式が終わって、そのまま駅へと向かった。

 「映画って、どこで見るの? この辺だと、映画館二つあるけど」
 「ショッピングモールの方! そっちのが、見た後もいろいろできるし!」

 そう言って、凛は僕の手を取って、微笑む。「バスの方、行こ!」そう笑って、僕の手を引っ張っていく。
 そんな凛を、僕は直視できず、「わかってるよ」なんて、そっぽを向く。凛は、そんな僕を見てクスクスと笑った。

 「有って、ほーんとわかりやすい」
 「うるさいな」
 「ふふ、それが、有の良いところだよね!」
 「……」
 「……なんで、何も言わないのよお! なんか、恥ずかしいじゃん!」

 そう僕の肩を軽く叩く凛。
 そんな凛が可愛くて、僕は思わず「ははっ」と声を出して笑ってしまった。
 すると、凛は目をまん丸にして、叩く手を止める。

 「凛?」
 「あ、ううん。なんでも。あ、バス来たよ。乗ろ」

 僕と凛は、バスへと乗る。
 そして、一番後ろの席の一つ前の、二人席へと座った。凛が窓側で、僕が通路側。
 バスが動き出せば、凛は窓から外ばかりを見ていて、「おー!」と夢中だ。そんな凛を見て、僕はギュッと唇を紡ぐ。そして、恐る恐る、ゆっくりと、優しく、凛を手を握った。

 「え……?」
 「……」

 タイミングを間違えただろうか。
 僕から繋ぐなんて、変だったろうか。
 おかしかっただろうか。嫌だっただろうか。

 そんな事を悶々と考えていると、隣から「ふふっ」と、笑う声がきこえ。
 ぎゅっと、手が握り返された。

 「……え?」
 「え、じゃないよ。そこは何も言わないで、幸せを感じるところだよ」
 「……ああ、うん。ごめん。幸せだよ」
 って、なに恥ずかしい事を言ってるんだ、僕は。
 チラリと、凛の方を見ると、凛は目をまん丸にしていた。
 「……えと、なんか、ごめん」
 「いや、あの、うん」

 こんな風にどもる凛は、珍しいな。

 「凛、どうしたの? なんか、変じゃない?」
 「それは有だよ! 有の方が、変! どうしたの?!」
 「えっ、そうかな……?」

 僕が首を傾げると、凛は「うん、そう。絶対違う」など、ブツブツと言っている。

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