君の笑顔に涙する

 目覚めは最悪だった。
 ここ最近、ずっと最悪だ。

 夏休みが始まり、二週間が経った。
 そして、あの日以来、聡とは一度も会っていない。聡から、連絡も来なかった。

 聡の言動を思い出す度、僕はイラつく。
 元々、凛に会いにくかったのが、さらに会いにくくなった。

 いや……もう、会いたくなくなってしまったのかもしれない。

 凛が本当は聡が好きだと、頭では理解できても、気持ちがついていかなかった。
 ただぼーっと、ベッドで寝転がりながら、文庫本を読む。
 文庫本の内容は、上手く入って来ない。モヤモヤしていると、下から母の声が。

 「有ーーー、コンビニでお茶買ってきてー!」

 面倒くさいな、なんて思ったが、良い気晴らしになるかもしれない。

 そう思い、僕はコンビニに行く支度をして外へと出た。
 外は、夏らしくとにかく暑い。日差しが強く、僕はキャップを深く被った。
 
コンビニに着けば、冷房がよく効いていて、とても気持ちが良い。僕は一番後ろの棚にある二リットルのお茶を手に取った。そして、レジに向う途中、ふとデザート類が並べられている棚が目に入る。『新発売』と書かれたプリンが目に止まり、僕は思わず手にとった。

 ……これ、凛が好きそうだな。

 なんて思い、自分の口元が緩むのを感じた。そんな自分に呆れ、僕はプリンを棚に戻し、二リットルのお茶だけを持ってレジへと足を運んだ。

 二リットルのお茶と同じくらい、自分の足取りや心は重い気がした。

 ──こんな些細なことで、凛が出てきてしまう。

 自分がどれだけ凛のことで頭がいっぱいだったのか。
 自分がどれだけ、凛に溺れていたのか。

 こんなところでわかってしまうのが、たまらなく苦しかった。

 僕は……少しだけ足を早めた。


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