君の笑顔に涙する
声と音
僕は、あれからほぼ毎日病院に通っていた。
凛との会話は、昨日読んだ本の事、特別授業でのこと、聡のこと、いろんな事を話した。凛はどの話題でも、楽しそうに笑って聞いてくれていた。
「凛、おはよ」
「有! また来てくれた!」
そうニッと笑う凛に、僕も笑顔を返した。
いつも通り僕は、ベッドの近くにある椅子に腰を下ろす。すると、凛は「んふふふ」と変な笑い声をあげながら、ニヤニヤと笑っている。
「あのねあのね、来週ね、外出許可が出たの!」
「外出許可? 本当に?」
「うん! それでね、有と出かけたいな!」
「だめ?」と、首を傾げる凛の姿は愛らしく。
僕は視線を逸らしながら「うん、いいよ」と答えた。
そんな僕を、凛はクスクスと笑う。
その凛の笑い声に、僕はふと思った。
……あ、この感じ、なんか懐かしいな。
クスクス笑う凛が、いつもの凛の感じで、僕の口元は自然と緩む。
「なーに、ニヤニヤしてるのー」
「別に。凛、どこに行きたい?」
「うーん……」
ってか凛が覚えてる所って嫌いな所だよな……。
悩む凛の姿に、僕は少しだけ申し訳なくなり、僕が案を一つだした。
「……えっと、映画は? 凛、ホラー映画好きでしょ?」
一番最近のデートで、凛とホラー映画を観に行き、凛は『面白かった』『好き』と言っていたのを覚えていた。
「ホラーか……。有と観たやつ、微妙だったよね……」
頭が、ぐらりと揺れた。
ハンマーで頭を殴られた気分だ。
『……凛は、映画、楽しめた? あれ、好き?』
『うん、もちろん! 楽しかった! 私、好きだよ!』
凛と、カフェでの会話を思い出す。
あれも……嘘だったんだ。
どんなに今凛が僕を必要としていても、こうして現実を突きつけられると、やはりキツいものがあった。
「有……? どうしたの……? 顔色、悪いよ?」
「いや……ごめん、大丈夫だよ。じゃあ、映画じゃなくて……プラネタリウム。プラネタリウムは?」
「プラ、ネタリウム……?」
首を傾げる凛に、凛が忘れていることがわかる。
その姿に僕は安堵し、肩を落とす。
「じゃあ、行ってみようか、プラネタリウム」
「うん!」
そう笑う凛に、僕も笑顔を返した。