君の笑顔に涙する
投影が終わり、凛と外へと出ると、凛じゃグッと右腕を伸ばす。
「綺麗だったー!」なんて言いながら、凛は満面の笑みを浮かべた。
「うん、そうだね」
「また行こうね、有!」
数歩前を歩く凛が、そう笑って言った。僕は思わず凛の手首を掴む。「有?」と首を傾げる凛に、僕は何も言えない。
「有、どうしたの? そんな悲しそうな顔して……」
悲しそうな顔……僕は今、そんな顔をしているのだろうか。
「……怖いんだ」
「え……?」
「悲しいんじゃないんだ、凛。怖いんだ」
「怖い……? どうして……?」
僕は、凛の手首を握る手に力を入れる。凛の顔を見れず、僕は下を向く。
怖い。怖くてたまらない。
この手を離したら、凛がまた事故に遭ってしまうんじゃないかと。この手を離したら、凛が今日の事を忘れてしまうんじゃないかと。
凛が……全部思い出して、僕から離れてしまうんじゃないかと。
「大丈夫だよ」
凛の声に、僕は顔を上げた。凛は、ニコリと優しく笑っていて。
「私がいるじゃん」
自信満々にそう言う凛に、僕は思わず小さく笑う。
目頭が熱くなり、僕は必死に涙を堪えた。
「有、私今度はあれ見たい!」
凛がそう言って指を指したのは、壁紙に貼ってある花火大会のポスターだ。
僕は「じゃあ、一緒に見に行こうか」と笑って凛の手を握ると、凛の手がピクリと小さく震えた。凛は一瞬目を丸くして、僕を見つめる。
「凛?」
「……え、あ、なんでもない!」
このとき、腑に落ちてなさそうな凛の表情が、僕の頭の片隅に残った。