君の笑顔に涙する
彼女の提案で、学校から少し離れた公園へと向かった。
そこは、かなり広く、広場と遊具の二つに別れていて、道はランニングコースとなっていた。そのランニングコースを、二人で並んで歩いていた。
「結城くんはさ、休日なにしてるの?」
ありきたりな質問に、僕は少し驚きながらも答える。
「本読むか、勉強。あと、たまに聡(さとる)に誘われて遊びに行くかな。あ、聡って、一組の本場(ほんば)聡ね」
「うん、知ってるよ。本場君と同じクラスだもん!」
「あ、そうなんだ」
そういえば、彼女の名前を知らないな。
そうふと思うと、彼女は「そういえば」と付け出すように、言葉を発した。
「私の名前、言ってなかったね。私、浅野凛」
名前を聞いた瞬間、彼女らしい名前だと、そう思った。
鎖骨のあたりまである、柔らかそうな黒髪。大きく、ぱっちりとした瞳。ふっくらとした、ピンク色の唇。
そんな彼女はきっと、世間一般でいうなら美少女なのだろう。
「結城くんの事を知ってたのはね、その本場くんから聞いたの。ほら、彼ってさ、人気者じゃない?」
「あーそうだな」
聡は、サッカー部のエースだ。黒髪の短髪で、人懐っこい笑顔を見せるあいつは、女子に一定の人気がある。中学の時から友人の僕は、何度も聡から「告白されたー!」と自慢されてきていた。けれども、告白は全て断っていた。理由は、「惚れられるより、惚れた子と付き合いたい」とのことだ。