君の笑顔に涙する
「そんな彼が話す人って、どんな人だろうって思ってたの」
彼女の真っすぐな瞳が、僕の瞳を捕らえる。
「三組の友達に、教科書を忘れるふりしてでも、君を見たかった。君と話してみたかった」
彼女は、少し優しい笑みを浮かべながら、言葉を続ける。
「でも、向こうは私のこと知らないだろうなって、どうやって話しかけようかなって。気づけば、夏休み。
でも、同じ特別授業を受けてて……ねえ、このときの私の気持ち、わかる?」
彼女の問いに、僕は答えられなかった。
そんな僕を見て、クスリと笑い、足を止める。
優しい風が、彼女の綺麗な黒髪をなびかせる。
「君は、誰かに恋をしたことがありますか?」
彼女の、優しい声が、僕の耳をくすぐる。
「君は、心が震えたことはありますか?」
風が、強く吹いた。草や、葉が揺れる音が響く。
「君は、誰かと一緒にいたいと思ったことはありますか?」
彼女は、そっと、先ほどと同じように手を差し出す。
そして、優しい笑みを浮かべた。
「私と、恋をしてくれませんか?」
優しく、甘い声が、僕の体を一瞬で熱くさせた。
この瞬間、僕は彼女の笑顔に恋に落ちてしまったのだ。