君の笑顔に涙する

 「有! 有ってば!」

 横から、凛に呼ばれ、「あ、ごめん」と返す。

 「もう。お昼休みだよ、一緒に食べよ?」
 「ああ、うん。今日はどこで食べる?」
 「んー、やっぱ部室かな?」

 僕も凛も英語部に所属している。理由は、聡の勧誘だ。
 英語部は、人数がたらず、廃部寸前だったため、去年聡が僕を誘ったのだ。まあそんな聡は、英語部とサッカー部を兼部しているのだが。僕と凛が付き合い、夏休みがあけてから凛が入部した。

 「そうだね、部室行こうか。クーラーあるし」

 僕がそう言うと、凛は嬉しそうに笑ってみせた。
 部室は、旧校舎の三階の一番奥。ここのエリアが、文化部の部室となっている。授業で使うことはなく、昼休みにも活動がしたい部活もあるだろうということで、基本はずっと鍵はかかっていない。そのため、昼食をとる場として使用する生徒達が何組かいる。
 僕等も、そのうちの一組だ。
 部室に着き、僕と凛はお弁当を広げる。

 「今日はねー、卵焼きを自分で作ってみました! 有、食べて?」

 そう言って、凛はフォークに卵焼きを刺し、僕の方へと突き出す。
 「ほら、あーん」
 「……それ、恥ずかしくないの?」
 そっぽを向いて、そう言う僕を、凛はクスリと笑う。
 「恥ずかしくないよ。好きでしてるんだもん」
 「……そう」
 『好き』、そんな言葉がたまらなく嬉しいのだ。僕のことが、なのか、食べさせるという行動が、どちらなのかはわからないが、嬉しくてたまらない。
 僕は、恥ずかしくてたまらず、控え気味に口をあける。しかし、そんな僕を見透かしたように、凛は追い打ちをかける。

 「口、もっとあけてよ。それじゃ、卵焼き入らないよ」

 凛の言葉に、従うしかなく、僕は言われた通り口を大きく開いた。そして、「よし、良い子」と凛は満足げに笑い、僕の口に卵焼きを入れた。

 卵焼きは、とても甘かった。

 僕は、「甘い。美味しい」としか答えられず、凛は「もう、もっと細かく言ってよー」と頬を膨らませる。

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