君の笑顔に涙する
すると、部室の扉が大きな音をたてて開いた。
 目線を向けると、そこには汗をかいた聡が、焼きそばパンを持って立っていた。
 
「あっちー。あちいな、ここも外も! お熱い奴らがいるせいかねえ!」

 そんなことをニヤニヤとしながら、言う聡。僕は、小さくため息をついた。
 「早く扉閉めてよ。クーラーつけてるんだから」
 僕がそう言うと、聡は「はいはいっと」と言い、扉を閉め、凛の隣の席に座った。凛の隣に聡、その正面に僕一人。これが、いつもの僕等のポジションだ。
 「お、浅野ちゃんの卵焼き、美味そう!」
 「よかったら、食べる?」
 凛は、そう言ってフォークに卵焼きを刺し、聡の口元へと差し出す。
 聡は嬉しそうに、「サンキュ!」と言って、卵焼きを口にした。
 「んーっ! 美味い! こりゃ、世界一美味い卵焼きだ!」
 そう笑って言う聡に、凛は嬉しそうに笑った。
 このようなやり取りは、最近になっては日常茶飯事だ。僕は、特に嫌とも思わず、見守っている。ふと、凛と目が合う。僕は、右へと首を傾げる。すると、凛は少し顔をしかめ、視線を逸らす。そんな凛に、僕は左へと首を傾げた。

 「ところで有さ、夏休み、勉強教えてくんね?」

 焼きそばパンを食べながら、聡は僕にそう言った。

 「はあ? なんで」
 「いやー、数学で赤点とっちゃって。夏休み、補習あんだよ」
 「知るかよ」
 「頼むよ。文庫本五冊で、どうよ」
 「……日にち決まったら、三日前には言えよ」
 「そう言ってくれると思ったよ、親友!」

 満足げに笑って、親指をたてる聡。そんな聡に、「バカ」と素っ気なく言い、視線を逸らした。



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