君の笑顔に涙する
「ねえ、有、私も教えてもらってもいい?」
「え、いいけど」
「おい、即答かよ」と、聡は苦笑い。
「でも凛、夏休みは忙しいんじゃなかったっけ? なんか、祖母の家の方に行くとかなんとか」
僕がそう言うと、凛は「えっと」と少し視線を逸らす。
そして、少し頬を赤く染め、目をキョロキョロとさせる。
「平気。その日だけでも、空けるよ。それに、本当は夏休み、有といっぱい会いたいもん!」
僕は、恥ずかしくてたまらず。顔が熱くなるのを感じ、視線を逸らして「……そう」と一言。
「おいおいおい! あのなあ、有! ああ、もう!」
両手で頭を抱えている聡に、「うるさい」と僕は返す。
「まあ、いいや。飯食い終わったし、おじゃま虫は退散しますかね」
聡は、グッと体を伸ばし、ドアへと向かう。そして、ドアを開け、「あ、そうそう、浅野ちゃん」と、何か思い出したかのように、振り返った。
「俺の親友を、あんまりいじめんなよ?」
そんな聡の言葉に、僕は首を傾げることしかできなかった。チラリと、凛の方へ視線を向けると、凛は目をまん丸にしていて。そして、すぐにニコリと、微笑んだ。
「もちろん!」
そんな凛の言葉に、聡は苦笑いをこぼして「じゃーなー」と部室を出て行った。
「凛、さっきの聡の言葉、どういう意味かわかるの?」
「有が、鈍感だからでしょ?」
「え?」
凛は「ふふ」と、満足げに笑う。
その笑顔に、僕は疑問も何もかも吹っ飛んでしまった。