裏切り者の君へ
松田 将樹
來夢は引き出しにしまった小さなパンダの置物を取り出した。
縁日の日に雪也が射的で取った景品だ。
手の平の上でパンダを転がす。
ベッドの上に投げ出したスマホが鳴った。
液晶画面にスマホを鳴らせた相手の名前が表示される。
松田 将樹
來夢はその文字を一瞥すると視線をまた手の平のパンダに戻す。
「ランラン、なんで雪也は連絡くれないんだろうねぇ、忙しいのかなぁ」
手の平の上のランランはつぶらな瞳で來夢を見上げた。
その片目が少し潰れていた。