裏切り者の君へ

 男たちはあたしの歳なんて気にしてなかったよ。

 3歳ぐらいサバ読んで言うとすんなりそれを信じたよ。

 それか怪しいと思っても、自分たちに都合のいい方を信じるもんなんだよ。

 ナンパされて行った先で、最初はジュースを飲んでたけど、男たちが少し酔っ払ってくると、ちょっとだけだったらいいよねって、お酒を勧めてきた。

 そのちょっとだけのお酒がけっこう強いお酒だったんだと思う。

 あっという間にあたしは酔っ払っちゃってさ。

 男たちは外で風に当たった方がいいって言い出したんだ。

 あたし酔ってたけどそれでもちゃんとひとりで歩ける程度だったんだ。

 でも男たちは大げさにあたしを抱えるようにして歩き出した。

 この道をまっすぐ先に行くと公園があるからそこで休もうって言ってた。

 なんかやばいかもしんないって思った。

 思ったけど3人の男たちにしっかり体を支えられて振り払うことはできなかった。

 そうしたらひとりの男が声をかけてきたんだ。

 「由美ちゃんじゃない?」って、あたしの名前は菜々美って言うんだけどさ。最初はわけが分かんなかった。

 でもその男が声をかけてきたことで3人の男たちはあたしを離して、すぐにいなくなってしまった。

 ううん、その男はお姉さんの彼氏じゃないよ。

 あたしの全然知らない男。

 すぐにその男はあたしを助けるために声をかけてくれたんだと分かった。

 男はあたしが酔ってるのが分かると近くにあるドラックストアーの前であたしを待たせて店の中に入って行った。

 その時はもうそれほど酔ってなかったんだけどね、優しい人なんだと思った、その時までは。

 お姉さんの彼氏に会ったのはそのドラックストアーの前だったよ。

『こんばんは』って話しかけてきたんだ。

 あたしまたナンパだと思った。
< 39 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop