いつか、誰かの願いごと
「......願いが叶う丘?」
昼休みの時間、わざわざ隣のクラスからやってきた友人が、俺の前の席に座るなり、よくわからない噂話をしてきた。
「そうそう。街外れにそんなのがあるらしいんだよ」
なんでも、満月の夜にその丘の頂上で願いごとをすると、叶うんだとか。
なんともオカルトチックで胡散臭い話だ。
「へぇ、なんでそんな話を俺に?」
「いや、今日の夜は満月らしいんだけど、本当に願いが叶うのかなって」
いつから俺の友人は思考に乙女フィルターが掛かるようになったのだろうか。
そして、何となく次に来る言葉がわかったから、先に潰そう。
「先に言っておくが、俺は行かないぞ」
「ええ!なんで俺が言おうとしてたことがわかったんだ!?」
やっぱりか。
馬鹿な友人が、「まさかお前、俺のことが......!?」なんて言っているが、無視して視線を窓の外に逃がす。
空には、これでもかと自己主張の強い太陽が輝いている。
季節は夏。
まだまだ暑くなりそうだ。
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