NEXT 2U
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 英語の授業が始まる頃には、俺の思考は正常を取り戻した。
 She makes me lose control.
 当然麗しい意味ではない。文字通り。
 俺はintelligence beyond compareのはずなんだけど。とか言って。
 ペアワークをしましょう、と女性教師が声を張って、俺は膝を机から出した。
 橋田さんの黒いスカートがかぶさった膝が顔より先に目に入る。
 視線を持ち上げると彼女は教科書を胸の前で抱えている。
「えっと…じゃあ、あたしから読むよ」

 二人揃って、長い単語がろくに読めずに、つっかえては、笑いをこらえて、最終的に中途半端な微笑を唇のすみに張り付けたままで体を机と平行に戻す。
 妙な居心地の悪さと、ゆとり教育の弊害で高校になると途端難しくなった英文が渦を巻く。
 頭を回すと、口煩い彼女とその隣の席の男子が教科書の読みあわせをまだしていた。遅すぎる。
 原因はすぐに解った。
 あの女、発音一々訂正してる。
 ネイティブまがいの発音の良さに驚くよりも、彼女の隣で不可能なゴールを目指すことを強いられている純日本人の友人への同情の方がまさった。
「小宮さんたちは…もう大丈夫ですかね」
 半ば強引に先生が終了させた瞬間、小宮瑛子の隣が力が抜けきったような顔をして、俺は思わず吹き出しそうになった。
 手をあててこらえると、橋田さんが似たような仕草をしていた。
 目が合う。軽く会釈をすると、遠慮したような笑みが返って来た。



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