NEXT 2U

 ひとつ遅れたテンポで、誠?と語尾をあげた声が俺を呼んだ。
 振り返ると、久しぶりに見る顔がある。
「俺じゃなかったらどうするつもりだったんだよ」
「どうしようね」
 でも誠ってわかったもん、と彼女は唇の端を持ち上げる。

 なんだか足から力が抜けて、しゃがみこんだ。
 茉実はその横に立ったまま、俺を眺めている。
「疲れた」
「うん。そんな顔してる」
「しんどい」
「そうか」
「学校やめたい」
「あっそう。やめれば」
 冷たいやつだ。
 見上げると、彼女は片手を差し出した。
 それを掴むと、茉実は俺の体を引き上げた。顔の前にあった彼女の制服のスカートが一瞬のうちに視界から消えて、かわりに彼女の前髪を見ていた。


 茉実。
 まみ。
 マミ。
 懐かしい響きに、何度も頭が彼女の名前を繰り返した。
 彼女の髪に、ほんの少し茶がかかっていた。毛先のはねかたが、計算されたものになっていて、俺はまばたきをした。

 彼女と俺は中学三年で、初めて同じクラスになった。




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