NEXT 2U
マンモス校なんてほどのスケールではない学校、幼馴染の多い中で、茉実とは全く接点がなかったことが、逆に新鮮だった。
俺はあまり女子と関わる方ではなかった。
今と変化のない方針で、余計な面倒に巻き込まれるのも嫌だったから、友達は同性だけでよかった。仲がいいなんて言ってもたかがしれていた。
どうも彼女は、人に気を使うということをしたがらない人だ。
最初の頃、俺は、彼女は自分以外のもの全てを見ていると思っていた。一人でいるのは、周りをよく見渡すためだと。
そのうち、彼女はよく喋る女だと気がついた。やがてその認識は、孤高の人ぶっているだけの面倒くさがりの中学生というものに変わった。
ただし、観察力が異様にすぐれている、というのは正しかった。興味を持ったものは確実に脳内に保存し、些細な出来事も無意識のうちにデータ化されている。茉実と話していると、「そう言えばさ、」以降の話題の展開に驚かされたものだ。「あのときはこうだったよね?」なんて聞かれても、俺は全くそんなことを知らなかったりして、結局は彼女に、記憶力がひどいだの関心が薄いだのとけなされる。
茉実は、俺の瞳をさして、
「うつろだ」
と笑った。
「このまま寝ちゃいそう」
「それは困る」
「意識失ったら茉実が支えて」
「考えとくよ」
彼女は俺の腕にひじで触れた。
体重が自然とそちらに傾いていく。なんだよ、本気で疲れてやがる、俺。
体は傾かなかった。彼女の腕が重みをせき止めている。