NEXT 2U
 SHRの終わりを廊下の騒がしさが告げ、先生は出ていく。
 俺は欠伸を遠慮なくして、朝と昼を除くノーチャイム制がもたらしたこの流れる空気の恩恵に与った。ロッカーを開ける音や喋り声に満たされた校舎。素晴らしい。のんびりした校風。これは田舎だからかもしれない。
 数学のテスト返ってくるらしいよ! と誰かが叫んだ。うそー!! という金切声が耳をつんざき、俺はひそかに眉を潜める。
 一限の数学で先週終わったテストが返却されることに不審な点などないだろう、と嫌味たらしく呟く。音声にしないのは俺の優しさである。
 かばんの奥からルーズリーフと数1の教科書を引きずり出す。
 今日も頼むよ、俺の正義の教科書たち。

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