パクチーの王様 ~逸人さんがあやしい物を見ています~
ひ、一人目もまだ出来ていないのに、なんだこのプレッシャーは……、と箱を手にしたまま、芽以が固まっていると、醤油瓶を持って、戻ってきた水澄が張り付いたような笑顔で言ってきた。
「芽以ちゃん、こういうのはね、終わりがないのよ。
就職したら、結婚はまだかと言われ、結婚したら、子どもはまだかと言われ、産まれたら、次はまだかと言われ、今度は、家はまだかと言われるの」
ふふふ、と可愛く笑っているが、怖い……。
こんな順調そうな水澄でも、いろいろプレッシャーかかっていたのかと、芽以は妊娠検査薬を手に、フリーズしていた。
……お母さん。
人にはそれぞれ、その人の生き方というものがありましてですね、と思ったが、口に出して言おうものなら、この世代の人は、猛反論してくる。
芽以は沈黙することにした。
しかし、なにやら、くつろげなくなってきたから、もう帰ろう、と芽以は立ち上がる。