パクチーの王様 ~逸人さんがあやしい物を見ています~
「待ちなさいよ。
 デリカシーのない人ね」
と日向子が止めてくれる。

「日向子ちゃんも圭太に今すぐ訊いて来なよ。
 私と結婚するの、嫌なの? って」

「嫌って言うに決まってるじゃないっ!」

 今度は、ひーっ、と日向子が悲鳴を上げる。

 なんだか阿鼻叫喚だ。

 叫ぶ日向子に静が言った。

「大体、デリカシーがないのは日向子ちゃんだよ。
 圭太が好きなのに、なんで、僕につきまとうんだよ?

 僕が日向子ちゃんに本気になったらどうするの?」

 えっ、と日向子が赤くなる。

「静、日向子が好きなのか?」

 これまた、人のことなら、普段通り、ズバッと訊けるらしい逸人がそう訊いていた。

「いや、日向子ちゃん、僕の好みじゃないんだけど。
 もし、そうだったら、どうするのって言ってるんだよ」

「あんた、もう帰りなさいよーっ!」

 あくまでも淡々と語る静に、日向子がわめき出す。
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