パクチーの王様 ~逸人さんがあやしい物を見ています~
「芽以、おばあさんが川を下っていったままで、翔平が心配してるぞ」
という聖の言葉に、
いや、あかずきんちゃんですよ……と思いながらも、芽以は実家のカーペットにひっくり返り、天井を見つめていた。
「……なんだこの抜け殻」
と容赦のない兄に、更に容赦のない母が、
「さっき、生理が始まったんですって」
と冷ややかに、そして、ズバッと言ってくる。
「まあ、芽以ちゃん。
そう気を落とさないで」
唯一、やさしい水澄が声をかけてくれた。
「ありがとう、ありがとう、水澄さん」
と起き上がり、側に膝をついている水澄の手を熱く握ると、礼拝のように頭を下げる。
水澄は苦笑いしていたが。
気持ちはよくわかってくれているようだった。
同じような攻撃を何度も受けたからに違いない、と恨めしく、母と兄を見る。