パクチーの王様 ~逸人さんがあやしい物を見ています~
その日の夜、落ち込んでいる芽以を気遣ってか、芽以の実家のみんなが店に食べに来てくれた。
そして、いつものように静と日向子も来て。
メールの端々から事情を察したらしい千佳も、みんなを連れて来てくれた。
賑やかな方がいいと思ったのだろう。
そんな千佳が日向子を見つけ、騒ぎ出す。
「あっ、泥棒猫女っ!」
「なに人を妖怪みたいに言ってんのよっ」
しかし、意気投合して呑み始めてやかましい。
「……お願い、帰って」
と彼女らと静の居るテーブルで芽以が言うと、まあまあ、とうるさいだろうに、常連のご婦人方の方が芽以を止めてくれた。
そのとき、ふと、彬光《あきみつ》が言ってきた。
「芽以さん、今日、いつもより、動きがスムーズですね」
……いつもトロイというのだろうか、と思ったが、そういえば、なにやら、身体が軽い。