パクチーの王様 ～逸人さんがあやしい物を見ています～

「でも、私、なんだか昨日、この子ができたような気がするんです」
と逸人を見上げて芽以が笑うと、逸人は、そんな莫迦な、という顔をする。

　いや、そんな莫迦ななんだが、でも、そんな気分だ、と芽以は思っていた。

「逸人さんが私も、私のお腹の子どももぎゅっと抱きしめてくれたから」

「芽以……」
と逸人が芽以を見つめる。

「そこっ、客が帰るまでは、いちゃつかないっ」
と日向子がテーブルから叫んできた。

　千佳たちが笑う。

　逸人がその光景を見ながら言ってきた。

「芽以、やっぱり秘境に行くのはやめるよ」

　え？　と見上げると、
「……こうして、ずっとみんなに見守られて育って欲しいから」
　そう言い、逸人は芽以のお腹を見て笑う。

　まあ、この騒がしさを子どもが嬉しいと思うが、鬱陶しいと思うかは謎だけど……。

　今まさに、千佳になにか言われて、からかわれ、聖に頭をくしゃくしゃされて、やめろよーっと叫んでいる翔平を見る。

　その可愛らしさに、みんなが笑い、逸人と芽以も二人で視線を合わせ、ちょっと笑った。