檸檬の黄昏
茄緒は上品な深い緑色のノースリーブドレスを身に纏っていた。
スカート丈はくるぶしまであり、腿まで切れ目が入っており、長い白い足が見え隠れしている。
胸元は鎖骨の見えるボートネックで、形の良いバストを覆っていた。
背中側は大胆に開き、鍛えられた美しい背中から腰にかけての細いくびれ、歩くたびに逆ハート形のヒップが動く様がなんとも悩ましい。
七センチヒールを履いた華奢な足首も美しい。
靴、イヤリング、ブレスレットはゴールドで統一してある。
小夜いわく、檸檬をイメージしているそうだ。
緩く巻いた長い髪を全て左側に無造作に乗せている。
背丈もある茄緒は一気に周囲の視線を惹き付け魅了した。
小夜の作ったドレスは完璧だった。
茄緒の魅力を最大限に引き出し、美しく見せる全て計算ずくの仕事だ。
決して下品ではない露出感、パーティーに相応しい遊び心のあるデザインと小物使い。
社名をイメージしたドレスのカラー。
全てが茄緒を引き立てる。
誰もが息を呑む極上の美女であった。
(遅いなあ耕平さん。ボイコットされたら、どうしよう)
当の茄緒は不安になっていた。
元々、嫌がっていたので、それもありうる。
服を着る事は楽しいが今はモデルではないし、何より主役は自分ではない。
社長である耕平だ。
茄緒は廊下へ出るとスマホを取りだし電話してみた。
出ない。
もう一度かけてみる。
やっと繋がった。
車を駐車場に止め、こちらに向かっているという。
「え、本当ですか?」
茄緒は周囲を見回すがそれらしい人物がいない。
少しして遠くにスマホを耳に当てた一人の長身が見えた。
こちらに近づいて来る。
……え
その長身は茄緒の前で立ち止まりスマホの通話を切る。