檸檬の黄昏
夕刻になり、皆で後片付けをした後、バーベキューはお開きとなった。
耕平と涼が、二人で炭の始末をしている。
何事かを話しているが、内容はわからなかった。
やがて片付けを終えた麗香が再び涼の元へ行き、腕に自分の腕を絡める。
「あたし、涼さんに送ってもらえる事になりました。茄緒姉さん、耕平兄さん、敬司さん、帰りますね」
(な、茄緒姉さん?)
耕平だけではなく、茄緒もついに義理家族扱いされ、絶句した。
涼はまんざらでもないのか、ただ単に慣れているのか、笑顔のまま否定も肯定もしない。
だが、
「茄緒、また来るからな。耕平さん、敬司さん、姉をまたよろしくお願いします」
と、丁寧に頭を下げた。
涼の車にふたりが乗り込み見送った後、
「あーあ。本当に涼が麗香さんと一緒になったら。どうしよう。涼を信じたいけど……」
茄緒が盛大にため息をついた。
耕平が涼しく笑う。
「ブラコンだからな、あんたは」
「そうです。極度のブラコンです。涼~」
最初は麗香の牽制にと軽い気持ちでバーベキューに誘ったのだが、時の人気俳優、青柳涼の効果は絶大過ぎたようだ。
おろおろしている茄緒に、耕平が追い撃ちをかける。
「式では、おれが手紙を読んでやろうか?」
「おお、いいぞ耕平。おれは司会進行させてもらうわ」
さらに敬司が加わり、ふたりの上司が意地悪く盛り上がると、茄緒は頬を膨らませた。
「ひどい。わたしは真剣に悩んでるんですよ?」
「おれはいつでも真剣だし、真面目だ」
「そうだぜ、茄緒ちゃん。いつでも全力だ」
完全に面白がっている、ふたりの男上司に拳を振り上げ茄緒は抗議する。
太陽はまだ明るいが、ひぐらしの鳴き声が聞こえ始めていた。