檸檬の黄昏



三日間の出張の予定だった耕平だが一日短縮して、二日で切り上げられることとなった。


自動販売機とアプリのおかげで依頼主への報告も直接リアルタイムで自動で行われるので、基本的には商品の発送のみとなり、希望によっては現地へ依頼主と同行するだけになった。

ホテルで一泊した耕平が朝、自分の車に乗り込んだ時だ。
運転席の足元にピンクのアンコウストラップが落ちている事に気づいた。

ワイパーレバーにストラップ部分が残っており、どうやら千切れたようだ。

耕平は身を屈め拾うと何気なく助手席にそれを放る。

先日の茄緒の姿が脳裏をよぎる。

何か嫌な予感を感じ耕平が腕時計に目を落とす。
時間は朝の七時前である。
朝の通勤ラッシュに巻き込まれる前に高速に乗ろうと考えていたのだが、この時間は茄緒がランニングに行く時間だ。

耕平がスマホを取りだし茄緒への通話ボタンを押す。
だが繋がることはなかった。

耕平はスマホを車内のホルダーへ掛けると車のエンジンをかけた。
そして地下駐車から車を発進させ、帰路を急いだ。

< 66 / 85 >

この作品をシェア

pagetop