檸檬の黄昏
再び時間は現在に戻る。
動揺しざわついているスタッフと警備員がかけつける。
シャッター音が響き渡った。
「はい、どうも。新聞社の石田です。今の状況を説明して頂けますか?地元活性化の取材で、まさかの場面ですね、禿弁護士。あ、ちなみに動画も撮ってますよ」
と笑顔で続ける。
目は笑っていない。
「貴様、あの時の記者だな」
「おや、ぼくなんかを覚えていて下さったなんて、光栄です」
今度は潰されないよう証拠に証拠を固めて見ました、と付け加える。
「イケメン弁護士の正体はDVストーカー男だったなんて、センセーショナルですね」
石田が云った。
警備員に挟まれた禿は笑った。
「茄緒!」
茄緒に目を向け叫んだ。
「愛しているぞ!きみは、ぼくの物だ。ぼく以外の誰も愛せるものか!」
茄緒の体が震え顔が青ざめていく。
耕平は無言で抱きしめ茄緒の耳をふさいだ。
「安心しろ、坊や。茄緒はおれが大切にしてやる。誰にも渡さんよ」
耕平がせせら笑うと、禿は鼻を鳴らし背中を向ける。
振り替えることはなかった。
「上手くいきましたね!」
涼が笑顔で近寄り耕平とハイタッチをする。
「わたしはドキドキものだったわ……」
茄緒はため息をつき胸を撫で下ろした。
「がんばったな」
耕平が茄緒の頭を撫でる。
「そうだよ姉ちゃん、すげぇカッコよかったぞ。やっぱり姉ちゃんすげぇ」
涼は興奮気味に茄緒を絶賛している。
「人気俳優さんに誉められて、光栄ね」
茄緒が苦笑しドレスを改めて触る。
「小夜さんが作ってくれたこのドレス、また着ることになるとは思いませんでした」
親睦会で着用したドレスだ。
今日は化粧はしっかり目にメイクしてある。
唇も艶やかにふっくらとして、目元もはっきりとしている。
「化粧が濃いって、笑わないで下さい」
「いや、綺麗だ」
耕平が微笑し茄緒は恥ずかしそうに赤面させた。
そんな二人を眺め涼は嬉しそうだ。