好きだから傷付ける

泣きじゃくる私の肩に
まだ温もりの残るジャケットを
誰かがかけてくれた。

瀧澤「美空がそう思うのも無理はない。
美空は、俺達とは違うから。
俺が、雅來と出会った頃の話を
してもいい?」

声には出せなかったけど
私は大きく頷いた。

瀧澤「当時の俺はまだ高校に通ってて
でも、毎日喧嘩ばかりでさ
学校からは厄介者扱いされてた。
教師から毎日のように自主退学を
進められててむしゃくしゃして
街に出歩いては誰から構わず殴っていた。
そんな時、雅來が俺の加勢をしてくれて
何人もの人間を血まみれになるまで殴った。
一段落ついて、裏路地に
逃げ込んだ時、血まみれの拳を
見ながら雅來が言ったんだ。
また今日も俺はこの拳で
人の事を傷付けるんだなって。
その拳は震えてた。その目は屍の様だった。
一瞬にして分かったよ。
雅來も俺と同じ世界の人間だって。
ここは、この場所は雅來と俺の
スタート地点なんだ。」

美空「スタート地点?」
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