好きだから傷付ける
瀧澤さんが教えてくれた通り
鬼藤くんは岩下橋の真ん中で
体育座りをしながら顔を埋めていた。
1歩、また1歩とその距離を縮める。
縮める度に分かる。
鬼藤くんは泣いているのだと。
声を掛けていいかどうか
少し悩んだけど、ここで
声をかけずに立ち去れば
ここに来た意味がなくなってしまう。
第一声には気を付けた。
失敗しない言葉を選びたかった。
少し緊張したけど
沢山無視されたけど今の
鬼藤くんになら私の言葉は伝わるだろう。
美空「鬼藤くんに愛されてる人は
幸せ者だね。」
私の存在に気付いた鬼藤くんは
泣く事をやめた。
美空「失敗してもちゃんと反省して
これから先はどうしようって
ちゃんと考えてくれるんだもん。
...ねぇ、鬼藤くん。
鬼藤くんの心の痛みに比べれば
私の頬の痛みなんて
どうって事ないよ。
だから、自分を責めないで。」