好きだから傷付ける

鬼藤くんは鍵を開けると
一瞬、中に入り傘を持ってきた。
鬼藤くんには似合わない
ピンク色の傘だった。

雅來「滝川。これ返すよ。」

...これって...。
よく見ると
鬼藤くんが差し出した傘は
見覚えのある傘だった。

雅來「滝川は覚えてないだろうな。
入学式の日、家で母親の事を
殴った事がショックで
俺は街中で暴れてた。
でも、絡んだ相手が良くなくて
7人がかりで袋叩き。
俺、ここで死ぬのかなーって
そう思ってた時にこの傘を
滝川が俺にくれた。」

記憶を辿る。鬼藤くんの言葉と共に。

雅來「震える声で滝川は
...風邪、引きますよって言って
この傘を俺に手渡して
ずぶ濡れになりながら帰って行った。」
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